NEWSブログ

平成28年度 浜松地区中学校夏季総合体育大会 野球競技二回戦結果報告

野球

                                                 
開誠館 000 003 0      3             【開】牧-鈴木(元)                                  
                                               
三ヶ日 110 102 ×     5 

【戦評】                                               
 シード校三ヶ日との対戦だった。強打の三ヶ日はその自慢の打線を初回から見せつけた。しかし、開誠館はいずれも最少失点で切り抜け、5回終了時点で3-0。イメージ通りの試合を展開していた。6回表、開誠館の選手たちは、このイニングが勝負イニングになることを知っているようだった。先頭打者が四球で出塁すると、チームの士気を高め、全員で攻撃を始めた。すると三番増谷(二年:浜松東小出身)も四球を選び、無死一二塁。四番鈴木元太(三年:河輪小出身)がセンター前にはじき返し、無死満塁とチャンスを広げた。次打者は打ちとられたものの、向かっていく姿勢を緩めず、六番牧(二年:砂丘小出身)のサードゴロの間に三塁走者がホームを踏み3-1とした。七番半田(二年:広沢小出身)はフライを打ち上げたが投手と捕手の間に落ちて再び満塁にすると代打の馬場(一年:白脇小出身)が粘って四球を選び、押し出しで3-2。九番渥美(二年:浅間小出身)もしっかりとボールを見極め四球を選び3-3の同点に追いついた。いやらしい、ねちっこい野球とは、こういうことを言うのだと思った。まだ満塁は続いて上位打線に。

 三ヶ日は投手交代を告げた。このような状況で冷静でいられる選手は少ない。案の定、交代した三ケ日の投手はセットの静止を全くしていなかった。あきらかなボーク・・・。しかし、何事もなかったかのようにプレーは流れ、打者が三振で終了してしまった。

 そんなことを悔いている矢先、6回裏、三ヶ日は一死三塁のチャンスを作り出す。打者がショートゴロを放ち、三塁走者が突っ込む。バックホーム。送球の到達は当然、走者よりもはやかった。タイミングはアウトのタイミング。三塁走者はタッチを避けるため、体を逃がしながらホームに滑り込んだ。捕手はタッチした。主審のコールがない。捕手はあらためて走者にタッチした。誰もがアウトのコールだろうと思ったに違いない。クロスプレーから2~3秒ほどの間はあった。しかし、セーフのコール。周囲がざわめいた。思わず、監督がベンチから飛び出した。監督は今まで審判の判定に対して、そのような行動をとったことは一度もない。有利、不利に関係なく判定は判定と割り切って受け入れていたからだ。その監督がベンチから飛び出るほど、それほど異様な光景だった。

 驚いたことにそのような中でも選手たちはキレずにプレイした。みんなで声を掛け合って、集中を切らさないようにしていた。我慢していた。大量得点が入ってもおかしくない流れの中で、失点を二点に踏みとどめた。応援に来てくださっていた中学教頭先生も「キレずによく頑張ったな」と感心していた。

 新チームがスタートして以来、監督は常々言っていた。「我慢」という言葉。この試合中にも主将の鈴木元太は我慢という言葉をチームにかけていた。耐えるときにしっかりと耐え、チャンスをつかんだら全員で攻撃する。まさにそのような形を実践した試合になった。

 二点差を追いかける最終回も二番佐藤(二年:芳川小出身)がライト前にクリーンヒットを放ち、先頭打者として出塁した。三ヶ日も開誠館のあきらめない、粘りの野球に怖さを感じたのではないだろうか。しかし、スコアリングポジションに走者を進めるもあと一歩、及ばずだった・・・。

 三ヶ日も開誠館もお互いに持ち味を出した好試合だった。本当にいい試合だった。三ヶ日も自分たちがシード校であるということを忘れていたに違いない。ただただ、悔いは残る。お互いに同じ条件でやっているのだから・・・という人はいるかもしれないが、それで割り切れるほど元太の三年間は軽くはない。

 開誠館は現在、部員20名いるが、元太は開誠館の唯一の三年生だった。入部してからずっと一人だった。いい先輩に巡り合い、いい後輩に巡り合い、ここまでやってこれたのかもしれない。しかし、同級生が一人もいない、主将としての苦しい心の内を明かせる同級生がいない辛さは私の想像を超える。監督はすべて承知で今までの歴代の主将と同じように叱咤激励してきた。それでも元太は弱音を吐かず頑張ってきた。それに応えてきた。夏の大会7打数4安打。5割7分1厘という高アベレージを残した理由は納得できる。得点圏打率はもっと高い。昨年の夏の大会も最終回に同点打を放っている。この異常な勝負強さには舌を巻く。技術が向上したから、体が大きくなったから、野球の知識が増えたから・・・そんなことではない。元太の取り組みはすべて本物だったからだと思う。

 試合終了後、スタンドの前に整列し、選手たちが「ありがとうございました」と大きな声であいさつした。涙をこらえながら人一倍大きな声であいさつした元太の顔を見た時、涙が込み上げてきた。負けてがっかりしているだろうチームに、最後までしっかりやろういうメッセージを伝えているかのようだった。

 最後の試合に、最高の試合ができた。それは二年生の存在があったからだ。三年生は元太だけなので一学年上のチームとやっているのと同じ。普通に考えれば、中学の一年違いは技術面や体力面でかなり大きな差があり、試合にならないと思う。精神的にもまだまだ幼い。そんなチームがシード校の三ヶ日相手にあと一歩まで追いつめ、最高の試合をした。それには、二年生の元太に対する深い思いを感じてしまう。自分たちを引っ張ってくれた元太と一日でも長く一緒に野球をやりたいという思いを感じるのである。その一点の思いでチームは強くまとまっていたのだろう。そうでなければ、こんな試合はできないだろう。

 毎年感じることだが、三年生はチームに必ず何かを残してくれる。その思いの積み重ねがチームの良き伝統となって、チームが存続している限り、永遠に受け継がれていく。開誠館中学野球部の歴史はまだまだ浅いが、伝統はどのチームよりも深まっていると思う。今の一、二年生は、この一年かけて何を残してくれるのか、とても楽しみである。

                                              

 

 

 

一覧へ戻る