校長からの手紙(生徒のみなさんへ)
ニュース
親愛なる生徒のみなさん、元気に過ごしていますか。
「緊急事態宣言」が全国に発令されました。毎日、感染者数、感染により亡くなった方の数が報道されています。私は、この現状に胸が張り裂けんばかりの辛さで涙が流れてきます。しかし、我が身を顧みず、医療現場で闘っている方たちの姿を見ると、勇気をいただき「自分にできることは何か」を真剣に考えさせられます。皆さんは、どのように感じ、考えていますか。
ぜひ、命の大切さを感じ、考え、優しいそして強い心の人であってほしいと願います。
私がとても好きな詩を皆さんに贈ります。ぜひ、読んでみてください。
この詩は、アメリカ人の女性が、10歳の息子を亡くし、その悲しみの思いを綴った詩です。9.11同時多発テロの追悼集会で朗読され、とても大きな反響を呼び、瞬く間に世界中に拡散されました。
「最後だとわかっていたなら」
作・ノーマ コーネット マレック / 訳・佐川 睦
あなたが眠りにつくのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは もっとちゃんとカバーをかけて
神様にその魂を守ってくださるように
祈っただろう
あなたがドアを出て行くのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは あなたを抱きしめて キスをして
そしてまたもう一度呼び寄せて
抱きしめただろう
あなたが喜びに満ちた声をあげるのを聞くのが
最後だとわかっていたら
わたしは その一部始終をビデオにとって
毎日繰り返し見ただろう
あなたは言わなくても
分かってくれていたかもしれないけれど
最後だとわかっていたら
一言だけでもいい・・・「あなたを愛してる」と
わたしは 伝えただろう
たしかにいつも明日はやってくる
でももしそれがわたしの勘違いで
今日で全てが終わるのだとしたら、
わたしは 今日
どんなにあなたを愛しているか 伝えたい
そして わたしたちは 忘れないようにしたい
若い人にも 年老いた人にも
明日は誰にも約束されていないのだということを
愛する人を抱きしめられるのは
今日が最後になるかもしれないことを
明日が来るのを待っているなら
今日でもいいはず
もし明日が来ないとしたら
あなたは今日を後悔するだろうから
微笑みや 抱擁や キスをするための
ほんのちょっとの時間を
どうして惜しんだのかと
忙しさを理由に
その人の最後の願いとなってしまったことを
どうして してあげられなかったのかと
だから 今日
あなたの大切な人たちを
しっかりと抱きしめよう
そして その人を愛していること
いつでも
いつまでも 大切な存在だということを
そっと伝えよう
「ごめんね」や「許してね」や
「ありがとう」や「気にしないで」を
伝える時を持とう そうすれば
もし明日が来ないとしても
あなたは今日を後悔しないだろうから
人として大切なこと、温かな心、感謝する心…この詩を読むと、私の心は水で洗い流されたような気持ちになり、人を大切にしたいと思います。本校は徳育を教育の柱としています。皆さん、自分の心をしっかり観て、お話をしてみてください。
「窓を開けよう、心を開こう」( Open your heart while you open your window )きっと、鏡を見ると優しいお顔になっていると思います。
コロナウイルスの心配がなくなって、早く学校が再開されるのを祈りながらこの手紙を書いています。突然の休校で、新入生の皆さんは、学校にも慣れず、友だちもまだできない状況ですし、在校生の皆さんは、友達や先生とも十分にお別れができず、なんだかすっきりしない人がほとんどだと考えます。私たち教員も同じです。そこで、先生たちの想いを届けたいという願いを込めて、毎日、担任からメールを送っています。短い言葉ですが、あなたたちを想っていることが伝わったら嬉しく思います。
最後に、入学式、始業式で伝えたことを記します。
コロナウイルス感染拡大、そしていつ自分自身も感染するかわからないという脅威にさらされています。やらなくてはいけないことは二つです。一つめは、自分を守ることが人をも守ることになる。地球市民として、この地球上に暮らすあらゆる他者を思いやる優しさをもって生活をすること。(検温、マスク着用、手洗い、うがい、換気など、今の自分にできることはきちんとやる。)二つめは、正しい情報の選択と冷静な行動をすること。(昨日「緊急事態宣言」が発令されました。このことにおいても、ロックダウン(都市封鎖)ではないので、食料の買い占めなどはしないようにと伝えています。これまでも、マスクやトイレットペーパーなど買い占めにより、本当に必要な人に届かないということがありました。なぜこのようなことが、起こるのでしょうか。
これは、正しい情報の選択ができない。自分のことしか考えることができないという理由があります。このような状況は、非常に残念な状況であるといえます。
本校の生徒である皆さんは、地球市民として、知識を持ち、正しい情報選択と行動をしてください。
2016年9月、ニューヨーク・国連本部で開催された国連サミットで「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。SDGsとは、持続可能な社会を、世界レベルで実現するために、世界のリーダーによって、決められた世界共通の17の目標です。宣言第四節の冒頭に、つぎのようなものがあります。
(誰一人、取り残さない)この偉大な共同行動に乗り出すにあたり、我々は、誰も取り残されないことを誓う。人々の尊厳は、基本的なものであるとの認識のもとに、目標とターゲットが、すべての国、すべての人々、及び、社会のすべての部分で、満たされることを望む。そして我々は、最も遅れているところに、第一に手を伸ばすべく、努力する、というものです。
浜松開誠館中学校・高等学校が、学校のコンセプトとしているグローバルは、消費拡大のための、グローバルではなく、このアジェンダが言う一人も取り残さない「人類を発展させる温かな心」「世界の和の心」で、ありたいと考えています。この日本の地、この浜松の地にあっても、世界中の人々の、現状に思いを馳せ、自分の幸福とともに、彼らの幸福をも願う心が、浜松開誠館中学校・高等学校のグローバル精神です。
SDGsに取り組む理由は、大人が激変する地球環境とグローバル化する世界経済、政治動きの変化により起こりうる危機、まさに、今、起こっているコロナウイルス感染も含めての様々な危機を乗り越え、あなたたちが生きていく未来も、地球上での人間の営みが続けていけるようにと願い、あなたたちの幸せな未来を願い、取り組んでいることです。
その主役であるあなたたちは、現在の大人の動きをよく観て、知り、課題を見つめ「自分たちにできることは何か」を考え、実際に行動することが求められています。日々の生活のなかで、授業においても、ぜひ、この視点でSDGsを考えるとともに、自分の学習とどのようにつながってくるのかを考えてほしいと思います。
学習は、定期テストを乗り越えるためのものでもなければ、入試を突破するためだけのものではありません。あなたたちが社会人となって、この日本や、世界を支えていく人になった時に、つながってくるものです。「教えてもらう」だけの学習から「自分の意志と力」で学ぶ学習へ、「依存的学習者」から「自立的学習者」へ、成長してください。
SDGsの最も重要なメッセージの一つは、「誰一人取り残さない:Leave no one behind」。今回の新型コロナウイルス感染拡大への対応についても、このSDGsの精神のもとで誰一人取り残されずに進められ、その先に、より持続可能な世界が訪れることを願いながら、今守るべきことを守り、命を大切にしていきましょう。さらに、私たちに何ができるかを、先生たちと一緒に考え課題解決に取り組んでいきましょう。
最後に、自分に与えられた自由な時間を、自分自身でデザインして主体性をもち生活できるようにしましょうね。
もうしばらく会えませんが、命を守る感染予防だけは入念にして過ごしてください。
明るいあなたたちの笑顔、楽しそうに弾む声を思い浮かべながら、次回会える日を楽しみにして過ごします。
令和2年4月17日
浜松開誠館中学校高等学校
校長 髙橋千広