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中学校長ブログ:卒業証書授与式・校長式辞

日常の風景

■ 浜松開誠館中学校「第18回卒業証書授与式式辞」

 

 暖かくやわらかな春の風が通り抜ける良き日に、ご来賓、保護者の皆様のご臨席のもと、誠心学園浜松開誠館中学校第18回卒業証書授与式を挙行できますことを、卒業生とともに心から感謝申し上げます。

 

 先ほど一人一人に卒業証書を授与いたしました。
 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。この卒業証書は、単に中学校課程の3年間を修了したというだけではなく、みなさんが小学校からの、通算9年間に渡る義務教育の課程が修了したことを示しています。
 保護者の皆様におかれましては、小学校の多くの仲間が地元の公立中学校へ進む中、若干の不安を持って、地元を離れた本校中学校へ入学させることは大きな決断であったことと思います。そうした中で、そっと子どもたちの心に寄り添い、支えてきた皆さまのこれまでの日々に深く敬意を表するとともに、引き続きこれからも、お子様の成長していく姿に、温かいまなざしを注いでいただければと思います。

 

 さて、卒業生の皆さん、浜松開誠館中学校での3年間は、ひとりひとりが大きく成長した日々であっただろうと感じています。少し大きめの制服に身を包みながら、緊張の面持ちで校門をくぐったことも、はるか遠い日の思い出ではないでしょうか。いつの間にか、すっかりと身も心も大きくなって、それぞれが学校生活に励んだ毎日であったと思います。
 特に3年生になってからのこの一年間は、大きな飛躍の一年ではなかったかと思います。4月の立志合宿や徳育Kコンパスでの未来予想図の作成を通して、自分らしさをどう方向づけるかということを考え、将来の夢の実現に向けて必要なことは何か、またどんな努力をしていくのかを考えました。
 そうした中で、みなさんは中学の最上級生として、行事や「たて割り清掃」、委員会活動など、様々な場面でリーダーシップを発揮してきました。また、部活動においての日常の取り組みはもとより、文化部の各種発表会、あるいは運動部の中体連の大会では、それぞれが輝かしい成績を残しました。
 すっかり「開誠館魂」を教わる側から伝える側へと成長し、中学生としてはリーダー、あるいは中高一貫6年間として見ればミドルリーダーに成長したみなさんの姿は、下級生たちにとっても、大きな勇気を与えるものでありました。

 

 みなさんは、こうした成長と、輝かしい日々の中で義務教育を終えたわけですが、浜松開誠館の中高6か年においては、ゴールではなく折り返し地点にすぎません。
 この中学3年間は、行き先の示された道しるべに従い、目標に進んできました。むしろ、自らが学ぶという、本当の意味での「学び」は、これからがスタートではないかと思います。

 

 評論家の外山滋比古さんは、ベストセラーでもある『思考の整理学』という本の中で、この「学ぶ姿勢」についてグライダーと飛行機に例えています。

 

『グライダーと飛行機は、遠くから見ると、似ている。グライダーが音もなく優雅に滑空しているさまは、飛行機よりもむしろ美しいくらいだ。ただ、悲しいかな、自力で飛ぶことが出来ない。』

(ちくま文庫・外山滋比古「思考の整理学」グライダーより引用)

 

 つまり、自らが進んで学び、前に進むことを、飛行機と例えるならば、自力で知識を得ることなく、ただ言われるがまま引っ張られて学ぶのは、グライダーではないか、ということです。自力飛行でなければ、本当の学びではない、ということを言っているのです。
 そしてこの文章の一番最後にはこのように結んでいます。

 

『グライダー専業では安心していられないのは、コンピューターという飛び抜けて優秀なグライダー能力の持ち主があられたからである。自分で翔べない人間はコンピューターに仕事をうばわれる』

(ちくま文庫・外山滋比古「思考の整理学」グライダーより引用)

 

 これは30年も前に書かれた文章ですが、まさに、これからの社会の有りようを予想しているようにも思えます。
 みなさんにとって、中学校での日々は、ある意味グライダー的ではなかったでしょうか。しかし、義務教育を終え、それぞれが異なる自己の実現に向けて進みだす高等学校において、もっとも重要なものは、自らの志です。飛行機でいうエンジンです。つまり、志という名のエンジンです。
 残りの折り返しの3年間においては、誰かのせいとか、誰かに強制されるからではなく、自らが主役・主体となって、自らの意志で高校生活を有意義なものとしてほしいと思います。

 

 結びにあたりまして、保護者の皆様には、あらためてお祝いを申し上げるとともに、今後の高校生活3年間においてもこれまで同様に、本校の教育活動にご理解、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 また、卒業生のみなさんについては、徳育を柱にした「開誠館」の校風の継承者として、一層のリーダーシップの発揮を大いに期待しまして、式辞といたします。

 

平成28年3月17日 誠心学園 浜松開誠館中学校 校長 永井 靖

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